ソニーグループの研究機関であるソニーコンピュータサイエンス研究所のWebサイトを制作しました。組織改編を機にサイト全体を見直したいとのご要望を受け、デザイン、システム開発、既存データの移行まで一気通貫でお任せいただいた事例です。
Approach
議論を前に動かすために、まず「動くもの」をつくる。
サイトの情報整理は、お客さまと外部のデザイナーの方とで進められていました。しかし、私にご相談をいただいたとき、議論が行き詰まっているようだったので、まずは最小限のスケルトンサイトをつくり、それを叩き台に話を進めてみることをご提案しました。情報量が多く、本当にこの整理の仕方で実装できるのか、手元に「動くもの」がないために、議論が詰めきれないのではないかと考えたからです。実際にかたちにしてみると、お客さま側での要件の取りまとめも自然と前へ動き、デザインの方向性もクリアになりました。
装飾を省いたスケルトンサイトを構築し、議論の叩き台とした。
Design
研究員一人ひとりを主役に。
当初は実装を担当する予定でしたが、プロジェクトが進むなかでデザインも引き受けることになりました。ご要望は、所属する研究員を前面に出したいということ。ただし「研究員が自由に独立して研究できる風土」を大切にされていることから、"Member" ではなく "People" として表現したいとのことでした。そこで、すでにあったポートレート写真を使い、ロゴの輪郭をかたどった「窓」を通してソニーCSLの "People" を表現する意匠をサイトの入り口に据えました。多様な研究員がそれぞれの関心のままに研究に向き合う自由闊達な空気を、入り口で感じてもらえるデザインに落とし込んでいます。
ソニーCSLの自由闊達な研究風土を、ロゴをかたどった「窓」の意匠で表現した。
Data Migration
膨大なデータ移行をスクリプトで自動化。
CMSはこれまで通り使い慣れたWordPressを継続。ただ、情報整理を経て見えてきた新しいデザインには、現在のコンテンツ構造のままでは対応できませんでした。そこで、新デザインへ適応させるためのシェルスクリプトを実装し、データ移行を自動化。手作業の転記による抜け漏れをなくし、確実かつ短時間でのデータ移行を実現しました。
また、研究員の論文は、これまでWordPressとは別の独自データベースで管理されていました。こちらもシェルスクリプトでデータ移行を自動化し、WordPress上で一元的に扱えるようにしました。論文という研究成果の蓄積を、サイトのコンテンツと同じ場所で管理・公開できるようにしています。
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673
論文を一括移行
別管理だったデータベースから生成。1本ごとに、投稿・BibTeX・出版年・関連研究者・研究領域・英訳の工程を自動で付与しました。
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38
名寄せルール
旧サイトでカテゴリとして扱われていた人物やプロジェクトの表記揺れを吸収し、関連メンバーへ自動でリンクしました。
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1,340
投稿を二言語化
日本語版から英語版を自動で複製し、対訳として連結。論文を含めると、およそ2,000件を二言語化しています。
CMS
専門知識がなくても、迷わず更新できる。
日々の更新をできるだけ負担なく行えるように、WordPressの管理画面を細部までカスタマイズしました。たとえば "People" ページのコンテンツは、専用の「メンバー」投稿として追加できるようにしていますが、一方で、ニュースやプロジェクトに「関連メンバー」を紐づけたいというご要望もありました。通常であれば、メンバーを関連付けるためのカテゴリー管理が別途必要になるため、表示用のメンバー、紐付け用のメンバーをそれぞれ個別に管理することになります。そこで、表示用のメンバーを紐付け用のメンバーとしても活用できるようにカスタマイズしました。メンバー情報は一箇所で管理でき、どこから参照しても常に最新の状態が保たれます。
プロジェクトとメンバーがそれぞれのページで動的に関連づけられる。ひとつの更新が、それ以上にサイトを豊かにしていく仕組みを設計した。
細部までソニーCSL専用にカスタマイズした管理画面
Localization
世界中からの検索を、それぞれの言語で。
これまでも多言語対応はされていましたが、表示を切り替えるだけの仕組みのため、検索したときに各言語のページが正しく見つけてもらえないなどの課題がありました。今回は、言語ごとに独立したページとして生成されるように多言語化のシステムを作り直し、検索エンジンにも、海外から訪れる方にも、それぞれの言語で正しく届くように設計。あわせて、多言語のコンテンツはもちろん、新しい言語の追加まで管理画面から行えるようにし、将来あらたな言語が必要になっても、開発を介さずお客さまご自身で対応できるようにしています。
言語ごとに独立したURLを持ち、適切な言語でコンテンツを届けられる。
Accessibility
誰もが迷わず使えるサイトに。
公開にあたっては、ソニーグループが定める高いアクセシビリティ基準(WCAG 2.2 レベル AA 相当)をクリアしています。多様な利用者が、それぞれの環境で迷わず情報にたどり着けることをサイト全体の前提として設計しました。
お年寄りも、障がいのある方も、誰もが同じようにソニーCSLを知れるように。
Workflow
実装とコンテンツ制作を同時に走らせる。
新たに加わるコンテンツのなかには、実装に着手する時点でテキストが固まっていないものもありました。双方で無駄な待機が発生しないように、コンテンツはGoogleスプレッドシート上で作成できるフォーマットを用意し、完成したものからシェルスクリプトでWordPressへ流し込めるようにしました。これにより、私の実装とお客さまの原稿作成を同時並行で進められ、双方が揃い次第すぐに統合できる体制をつくり、結果として公開時期を後ろ倒しにすることなくローンチを迎えられました。